代表笹森 3月コラム
更新日:2022年5月5日
3月のある日曜日のこと。お茶の水校にて、登壇した説明会を終えてほっと一息ついていたところ、隣の教室から何やらにぎやかな雰囲気が伝わってきます。覗いてみると、ちょうど「集団音楽教室 エキスパートコース」の授業が始まろうとするところでした。そしてそこには、アノネ音楽教室(当時「花まるメソッド音の森」)の開校以来、私自身が3年間教えていた子どもたちがいました。
さらに、そこに中学受験でしばらく休んでいた子たちが久しぶりに教室に帰ってきて、
「よっ、久しぶり!」
「2年ぶりか?」
「いやいや、さすがにそんなには経ってないな(笑)」
と、和気あいあいと話していたのでした。
他愛もない会話ですが、教室に通い始めて7年目を目前とする今でもお互いつながり続けている子どもたちの姿を見て、心が温まりました。
気づけばあっという間に1年が終わり、新年度が始まろうとしていますが、今年度もさまざまなできごとがあったので、少し振り返っていきたいと思います。
まずは、2月の発表会での1コマについて。毎年、発表会の場で子どもたちの成長を定点観測してきましたが、夏休みや冬休みの「強化合宿」に参加した、特に高学年や中学生の子たちの演奏は、今年度になって一段とレベルアップしていました。そこでは、これまでのペースをはるかに超えた成長が見て取れました。技術面での成長のみならず、「音楽的」に弾くことへの意識がずいぶんと高くなっていることがわかりました。例えば、ある子の「P(ピアノ)」という記号の捉え方。音楽用語の辞典には単に「小さく」「弱く」などと載っていますが、その子は自分なりの、さらにその曲の、その部分での「P(ピアノ)」の表現にこだわり抜いて、作品を描いていました。
また、急成長の足がかりとなった「強化合宿」についてある子に聞いたところ、「強制的に、1日中弾くしかない環境が良い。それも、嫌ってわけじゃなくて、友達がいるから楽しいし、みんながいるからがんばれる」と言うのでした。
また、アノネ音楽教室から、コンクールで入賞する子も出てきました。今年度の「日本バッハコンクール」(ピアノコンクール)で3位という見事な結果を収めた4年生の女の子です。先日、その子にインタビュー(記事はこちらからご覧いただけます)をしたのですが、「音楽的」に演奏するうえで何を心がけているかというと、「たくさんの人の演奏を見たり聴いたりして、まねをする。そして、さらに自分なりに工夫している」とのことでした。詳細については、インタビュー記事を読んでいただければと思いますが、彼女もまた「音楽的」な演奏を磨きながら成長している一人です。「音楽的」というのは、前述の「P」(ピアノ)の事例にもあるように、情感がこもった、ていねいな表現であることを指します。これは、演奏者にとっての大テーマで、聴く人の心により豊かに響く音楽を紡ぐために、絶対に必要なことです。
さて、皆さまは「1万時間の法則」という言葉をご存知でしょうか。「優れた演奏家になるには、20歳ぐらいまでに1万時間の鍛錬が必要」というもので、一昔前によく言われるようになりました。その論拠となる研究の対象になったのは音楽大学で学ぶ生徒たちで、さまざまなグループに分けて検証されました。
それでは、この研究結果を実際の現場に当てはめてみるとどうでしょうか。音楽の専門校で学ぶ人は、多くの場合3〜6歳で楽器を始め、だいたい1日3時間以上は練習するも