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リレーコラム:2022年5月『大切なもの』濵口実莉(はまぐちみのり)

執筆者紹介:口実莉(はまぐちみのり)

子どもたちからの愛称は”みのり先生”。専門の楽器はクラリネット。

お茶の水校・オンライン校 集団音楽教室 水曜日クラス(年中長コース・小学生ベーシックコース)、および土曜日に開講しているリトミックコースの教室長を担当。1歳半から小学生の子どもたちの指導にあたる。また、アノネ音楽教室のイベント運営も担当。学生時代に吹奏楽部を部長として取りまとめた経験も活かし、指導や演奏に留まらない幅で活躍中!

(紹介文:リレーコラム4月号執筆者 坂村将介)


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『大切なもの』

 私は幼少期にたくさんの習い事をさせてもらっていました。水泳、英語、バレーボール、バドミントン、お習字、ピアノ、合唱などなど。 “本人がやりたいと思うものをやらせてあげよう”という考え方の両親は、私が「やりたい!」と言った習い事に、「いってらっしゃい!」と笑顔で送り出してくれました。


 様々な習い事に取り組んでいましたが、私の場合は大人になった今に至るまで音楽が残り続けました。たまたま職業として音楽を教える身になりましたが、そうでなくてもかけがえのない心の糧や、表現の手段として続けていたと思います。それほど大切なものが与えられたことに感謝しかありませんし、次の時代を担う子どもたちにもそんな経験を届けることが、最大の恩返しになるのかなと思う今日この頃です。


 そんな私が育った家庭はというと、いわゆる音楽一家では全くありません。父は「どの音を弾いても『ド』に聴こえるなぁ」と言うくらい音感がなく、音楽の知識もありません。母にはピアノの経験がありましたが、もう数十年ピアノは弾いておらず、実家にあるアップライトピアノもずっと眠っていました。


 私の音楽との関りの軸となっているのは、主に10年以上経った今でも続けているクラリネットです。気が付けば人生の多くを共にしている、私の大切なもののひとつです。クラリネットとの出会いは中学校の部活動でした。初めて楽器に触れたとき、金属の部分が冷たくてびっくりしたこと。初めて楽器に息を吹き込んだとき、木の温かい音がして、それと同時に気持ちも温かくなったことを覚えています。私は学生時代の喜怒哀楽をクラリネットと共にしてきました。コンクールに出演し、緊張で涙がこぼれ落ちそうなところを必死にこらえて大きな舞台に立ったときも、先生にご指導を受け、隠れて泣いていたときも一緒でした。


 楽器を吹くことが楽しくて仕方がなかった毎日を過ごしていましたが、そんな私にもスランプが訪れました。始めは、吹くたびに手ごたえを感じ、練習をすることが楽しくて仕方がありませんでした。ですが、もっとこう演奏したいという欲が強くなり、突き詰めて練習をす