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代表笹森 4月コラム

2022年度が始まりました。改めましてご進学、ご進級おめでとうございます。


 アノネ音楽教室では、この4月に100名近く新規の会員の皆さまを迎えることができました。全体の人数としても、年内には700名に到達する勢いで、コロナ禍以前を上回る、過去最大の人数規模になってまいりました。昨年度以前よりお通いの皆さまはもちろん、新たに加わったお子さまをサポートしていけることも、心から楽しみにしております。


 先日からは、夏の音楽合宿の募集を開始いたしました。今年の夏は、日帰りのコースに加えて、遂に宿泊のコースも再開いたします。特に宿泊のコースは、3泊4日で特訓に次ぐ特訓を行うもので、とてもおすすめです。


 会場として初めて使う長野の”信州国際音楽村”には、各練習室にピアノが備え付けられています。もちろん、お茶の水校を会場としたコースでも、レッスン室をフル稼働します。こうして環境に恵まれ、ピアノ・弦楽器・合唱のコースともに、たくさんの枠を用意することができました。また、ピアノと弦楽器のコースでは個別レッスンの時間を多く取りますので、発表会に向けた良きブラッシュアップにもなります。


 楽器をこれから始める方や、始めたばかりの方は合唱コースに参加することが可能です。また、日帰りのみではありますが、年長さんも大歓迎ですので、ぜひ奮ってご参加ください。


 みんなで仲を深めるためには、同じ釜の飯を食うことが一番早いもの。数日間寝食をともにし、アンサンブルをするなかで、一生ものの音楽仲間ができることでしょう。お子さまが一夏でしっかり技術を身に付け、ミニ社会での生活を通してたくましく成長できる場としてまいりますので、どうぞご期待ください。


 さて、私のチェロのレッスンに年少さんの頃から通い続けているA君が、晴れて中学生になりました。彼がチェロを始めてから、あっという間に10年近くが経ったわけですが、中学受験を終えて久しぶりに対面で再会した彼は、心身ともにひと回りもふた回りも大きくなっていました。受験休会の期間中も練習していたというA君ですが、中学生活が始まって落ち着いた先日から、対面でのレッスンを再開することになりました。近況について聞くと、興味深い話を教えてくれました。


 まずは、受験のときの話です。理科の試験は、9割が自分の考えを述べる問題だったそうです。例えば、一枚の葉っぱを配られ紙に模写する。そして、模写した後に気付いたことをできるだけ多く書くというものなどです。


 また国語の試験では、

「何かやりたいことがあるときに、別のことへの誘いを友だちから受けたら、あなたはどう考え、どう対応するか。自分の意見を書きなさい」

というような問題があったそうです。


 A君が言うには、知識に関する問題より、前述のような考え方や意見を記述する問題が多かったそうです。実際に世の中の入試問題は、アノネ音楽教室の母体となった学習塾である花まる学習会が柱にしてきた思考力や、判断力を問うような問題が増えるなどの多様化を見せています。また、2年ほど前から今年にかけて、小学校、中学校、高等学校の順に、大幅に改訂された学習指導要領が導入されてきましたが、そこには「知識・技能」だけでなく、「思考力・判断力・表現力」や「主体性・多様性・協調性」が加わっています。調査書も様式変更され、その子にどれほど主体性があるのか、より詳しく見られるようになっています。昨今高校や大学の入試で見られる改革が、中学受験まで手を伸ばしてきていることを肌で感じる話でした。ちなみに、前述の項目の多くが非認知能力の領域に入りますが、だからこそ、そこに大きく関わる音楽教育に改めて可能性を感じてきました。


そんなA君から、

「先生、学校から帰ってきたらなかなか時間が作れなくて練習ができないから、部活でチェロをやろうと思ってる」

と相談を受けました。元々週末にスポーツをやってきたので、それもありかなと思いましたが、

「とりあえずやりたい部活の体験を受けてみたら?」

と伝えました。どの部活か判断するのは本人次第ですが、まず練習時間の確保について考えているA君の立派さに感心しながら話を聞いてました。


 そして今、受験期を越えてある程度弾けるようになったら、逆にそこから音楽から離れていくことの方が難しいのではないかとすら感じます。とある統計では、音楽の習い事に取り組んでいる人のうち70%近くが、小学校6年生までに辞めてしまうという結果が見られます。受験期に一旦離れるのは仕方ありませんが、長期的に続けられるかどうかが要点です。アノネ音楽教室の場合、実に9割の子どもたちが、受験が終わった後もなお続けています。教える側としては慢心してはいけませんが、残っている子どもたちを見ていると、なぜ続けてこられたかのヒントがもらえます。


 一つは、やはり音楽に対しての肯定的な価値観が備わっていることです。中学生ぐらいになると、「家では全然何もやらないんですよ!」と保護者の方に言われているような子でも、レッスンでこちらがお手本を見せるときの眼差しがとても真剣だということはよくあります。


 やる気がないことと、興味関心がないことは違います。興味関心が育っていないと、先生のお手本の演奏を見ている時間が休み時間のようになってしまい、注意散漫な状態で聴くことにもなりかねません。しかし、これは本人が悪いということではなく、その子の興味関心を広げられていない先生の責任です。


 一方で、興味関心が広がっている子は、どうしたら上手に弾けるか知りたいという欲求にあふれています。まっすぐな眼差しで、子どもによっては半分口を開けて、買ってほしいおもちゃでも見るかのように、羨ましそうな目でお手本を見ていることもあります。


 私自身の中学校時代はひどい反抗期でもありましたが、チェロとピアノの先生だけには従順でした。素直でいられた要因は、技術の「実力差」をしっかり見せてもらえたからです。親や学校の先生の偉大さは、ある意味では遠すぎて、リアリティに欠けていたのでしょう。しかし、実技の土俵では、自分が取り組んでいる課題を、先生が目の前で上手に弾いて見せてくれるので、尊敬や憧れが生まれやすいのです。


 そんなふうに、彼らが中学生となり本格的な思春期が訪れ、口が達者になったりしても、そのような眼差しを向ける姿が見られるわけです。また、実技のことに限らず、恋愛の話や友だちや両親との関係など、人生のお悩み相談までしてくれるようになり、特別な可愛さを感じます。


 一人ひとりを10年、20年と長くサポートできるこの習い事に携わることには、何ごとにも代えがたい喜びを常々感じています。しかし、単なる自己満足ではなく、保護者の皆さまに、この教室にお子さまを生涯預けたいと思っていただけるよう、今年も邁進していきます。


アノネ音楽教室代表 笹森壮大

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コラムに対するご感想などございましたら、

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