代表笹森 2月コラム

更新日:2月28日

 今回皆さまに任意参加の特別授業のような形でご案内しているオーケストラのコンサート「旅するエール」*が、間近に迫ってまいりました。私、笹森をはじめ、アノネ音楽教室の弦楽器講師も団員として演奏します。

*3月6日(日)17:15開演/会場:ミューザ川崎シンフォニーホール、LIVE配信あり

https://classicaile.org(主催HP)

*会員さま限定の優待チケットがございます。詳しくは文末に記載いたします。


 クラシカエールという団体(プロジェクト)が主催のコンサートで、今年からアノネ音楽教室が運営として参加し、講師らも奏者やスタッフとして携わります。クラシカエールは、”異色コラボや最先端のテクノロジーを組み合わせた「見たことのないクラシック音楽」を通じて、より多くの人々の暮らしをより豊かに変えたい(暮らし・変える)”という思いで活動しているプロジェクトです。


 先述した主催のHPを見ていただければ伝わるかと思うのですが、クラシックと全く異なる分野のものをかけ合わせながら、わかりやすく、わくわくするような形にコンサートを仕立てています。会議の度に伝わってくる「家族で楽しめるコンサートにしたい」「若い人たちにも楽しめるコンサートにしたい」「子どもたちも驚くようなコンサートにしたい」といった主催者たちの思いに私たちとの親和性を感じ、会社として参画することになりました。


 「旅するエール」の第1部では、人工知能”AIVA”が沖縄民謡を学習して作られた新曲を演奏します。会場ではForbes 30 Under 30(世界を変える「30歳未満の30人」)に大谷翔平さんと並んで選ばれた、(株)イノカの高倉葉太さんに、サンゴ礁の魅力を解説していただきます。また、水中写真家の中村卓哉さんをお招きして先日行われたフォトコンテストの入賞作品を会場のスクリーンに音楽と合わせて披露します。なお、人工知能に学習させるにあたっての選曲監修は、当教室の教材や選曲の監修を行う坂村が担当しました。


 他には、クラシック音楽史上屈指の名曲である『だったん人の踊り』(ボロディン作曲)が、なんと日本の阿波おどりとコラボレーション。加えて、会場を使った拡張現実(AR)など、これでもかというほど、ありとあらゆる分野が混じり合った演目になっています。アノネ音楽教室をはじめとした花まるグループ会員の皆さまには、優待チケットの枠をご用意いたしましたので、ぜひ奮ってご参加ください(VIP席に、通常のお席の料金から更に割引した料金でお申し込みいただけます。詳細ついては文末の情報をご参照ください)。また、ご自宅などからLIVE配信でご覧いただくことも可能です。


 さて、年間を通して多くいただく質問の一つは、譜読みに関してです。具体的には、「うちの子譜面が読めないんですが」「ドレミは読めるのに全然弾けないんです」といったものがあります。


 今までに何度もお伝えはしてきているのですが、まず、当教室の子どもたちは基本的に驚くほど譜読みがよくできます。小1以上であれば、アプリ教材によって私たち指導者の子ども時代よりよほどソルフェージュ能力に長けているということを、教室長・講師一同日々目の当たりにしています。


 一方でレッスンで子どもたちを見ていると、譜面を読む能力は十分にありながら、「譜面をしっかり読めていない」ということがわかります。ご自宅でサポートしているなかでも、お子さまが譜面に書かれたことを全然気に留めていない、気がついていない、ということが日常茶飯事という方もいらっしゃるのではないでしょうか。


■譜例1:『8つのユーモレスク』作品101より第7曲(ドヴォルザーク作曲)*

 例えばこの譜面ですが、大人と子どもそれぞれの視点で見てみると、どう違うでしょうか

*弦楽器であれば、スズキメソードの教本3巻に登場。ここでは、原曲のピアノ版の譜面を例にしています。


 大人の視点では、冒頭2小節だけで、このようなことに意識が向きます。

「冒頭の音部記号(ト音記号やヘ音記号)、調号(♭や♯)、拍子記号の確認」「音間違いがないか」「指番号の選択」「音符や休符が正確な長さか」「強弱(クレッシェンドやフォルテなど)の表現ができているか」「アーティキュレーション(スラーやスタッカートなどの音の区切り方)は正確か」「アルペジオのタイミング」「フレーズを意識して弾けているか」、そして譜面に書かれていないことで「フォームが崩れていないか」「リズムが整い、音色は美しくなっているか」など。


また、各楽器に特化したことで、ピアノであれば「ペダルのタイミングや加減」なども加わります。

このように、譜面を読む際にさまざまなことを俯瞰することができ、いっぺんにたくさんの情報が目に入ってくるものです。


 今度は譜例2を見てみましょう。


■譜例2:譜例1より9,10小節目を抜粋


 私自身はよく「縦の情報」と表現するのですが、10小節目(斜体で「10」と書いてあるところ)の1拍目という1秒にも満たない箇所で、音符の縦1列を見るときに、これだけ多くのことを読み取る必要があります。


「調号の♭」(各音符の直前には♭が書かれていなくても、冒頭の調号に♭が書かれている音には全て適用されることになります)「スラーがかかっていること」「ペダルの踏み方、タイミング」「クレッシェンド」などです。


ここまでが、大人の視点の紹介でした。


 さて、多くの場合、人はいっぺんに色んなことを並行して考えることが難しいものです(「ながら作業」のようなレベルではなく、前述のような正確さが求められる場合の話です)。意識というのは、あくまでも「交互」に、または「順番」に向けられるものです。同時に2人の話を聴くことができない一方、あくまでも交互や順番にであれば聴くことができる、といったことです。ではなぜ大人が前述のようなマルチタスクをこなせているかというと、視点や意識を順番に切り替えているからです。子どもにはそれがなかなかできないものです。


 さらに、単に人生経験の長さの問題もあります。例えば、彼らが調号(冒頭に記載される♭や♯)を見落としてしまいやすいのはなぜでしょうか。私たち大人は長年さまざまな音楽(クラシック音楽と限らず、ポップスやBGMなども含む)を聴いた経験から”調性感”がついていて、調号の♭や♯に過不足があったり、間違った箇所についたりしていると、すぐにわかるものです。これは音で聴けば歴然です。そして、子どもたちはその調性感がまだあまり身についていないがために、♭や#に過不足があっても、違和感を抱けないということが当たり前に起きます。


 同時にたくさんのことを見たり考えたりすることについては、太鼓の達人を思い浮かべていただくとわかりやすいのではないでしょうか。縦の列を見るとき「叩くタイミングだけ」、要は音色や力強さ、表現などは関係なくリズムだけを意識すればいいのですが、あれだけでも初見で叩くのはどれほど難しいか(譜面の形でなくなった途端、私は全然できなくなります(笑))。


 それに比べて、実際の音楽で使う譜面を読むときは、リズムだけではありません(多くの打楽器のようにドレミの音程が無い場合でも、それ相応に意識すべきことが多々あります)。ここだけでもいかにハードルが高いかという話です。


 特に初見演奏ができる音楽経験者は、”周辺視”ということができます。簡単に言うと、一つのポイントを見たときに、その周りの情報もセットでキャッチできるという状態です。つまり、そのとき追っている音以外にも、しっかり周りの情報(ペダルや強弱などの記号、先の音など)を把握することができるというわけです。


 では、子どもはどうでしょうか。多くの子どもは、周辺視が全くできません。初見演奏ができるようになるということは、つまり周辺視ができるようになるということですが、普通そこまで数年はかかります。それまではとにかく一つの音だけ、あるいは一つの情報だけを追いかけて見ることしかできません。ピアノであれば、左右の手の楽譜を見るのも大変なことですし、一つの音を読むことに必死な子どもたちは、そもそも周辺に記載されている強弱や表情の記号までは意識もできなければ、そもそも視界にすら入ってきません。


 子どもが「3小節目の音符の上に何が書いてある?」と聞かれて、初めて「あ、スタッカートが書いてある!」と気づくことなどは、日常ではないでしょうか。逆に、視界に入っていない情報について指摘することは、窓枠から見えない部分の景色について、何があるか問い詰めているようなものです。


 さて、このことは、発表会などの舞台で立派に弾けるようになっても変わりません。余裕が出てくれば他に視線をやることができますが、意識の切り替えや、一度意識したことの持続はまだできないことも多々あります。「ダイナミクス(強弱)に気を付けてごらん」と伝えると、そのことだけに意識が向き、フォームが崩れたり、譜面に書いてある別の項目であるスラーを忘れたり。そもそも見ている位置も違います。スラーは譜例3のように上の段にかかっていますが、強弱を変化させる記号であるクレッシェンドは真ん中に書いてあるので当然です。


■譜例3

 基本的には、子どもたちは同じ高さのラインを見がちです。いろいろなラインを見なければならないにもかかわらず、視点の上下1cm移すことすら難しいわけです。


 さらに、一生懸命弾けば弾くほど見ている視野が狭くなります。そして、最大の問題は、弾くことに注力しているときは、自分の音をほとんど注意深く聴けていないということです。聴けたとして、せいぜい音が合っているか間違っているかぐらいで、ニュアンスがどのようになっているかというところまでは聴けていません。


 その子の視界が、本来は電車の窓の大きさ程度あったとします。しかし、その子が譜面を見ているときは、1c㎡見えていればいい方です。ゆっくりな電車であれば、景色(=譜面に書かれている、俯瞰すれば見える多くの情報)のうち、看板に書かれている文字(=音符や細かな指示記号)まで見えます。一方で、速く弾いてしまうと、新幹線に乗っているようなもので、看板の文字も読みにくくなれば、その文字を見ようとすると、更に周りの景色は見えなくなるわけですね。


 だからこそ、インテンポ(正規のテンポ)で練習しても、ほとんど見落としてしまいます。というより、見えてすらいません。これは、聴くことについても同じです。演奏するテンポ(スピード)が速ければ、新幹線の窓から過ぎ去っていく景色のように、音の輪郭がぼやけてほとんど聴けてない状態になってしまいます。しかし、子どもこそゆっくりな練習が嫌いなものですね(笑)。そこで、私たちの声かけが重要になってくるわけです(詳しくはセミナーでお伝えしています)。


 お伝えしたいのは、譜読や初見演奏だけでもこれだけの複雑さがあり、多くの壁が立ちはだかっているということです。できていないことのほとんどは自然発生的なもので、子どもの不注意と簡単に結論付けることはできません。それだけ高度なことをやっているわけです。そう思うと、一見雑に思えてしまう子どもの練習に対して、少し見え方が変わってくるのではないでしょうか。


 さて、受験を終えた子どもたちとご家族の皆さま、本当にお疲れさまでした。たくさんの方々からのご報告を受けております。厳しい受験そのものが子どもたちを大きく成長させてくれるものですが、先日私の門下でも嬉しいご報告がありました。私のクラスに年少さんのときから通うRくんが、受験を終えて連絡をくれたのです。電話越しに「受験休会の間、チェロで願掛けしていた!」と言うので、「チェロで願掛けって何?」と聞くと、「毎日10分練習したら受かると思って弾いてたんだ」ということだと教えてくれました。本来弾かなくても良かった受験休会期間中のことです。そんな、なんとも誇らしく嬉しい報告に、先生のあゆみ(通知表)は先生がいないところでの子どもの姿こそが物語るなと感じました。

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『旅するエール』〜Play for the Blue Ocean〜 詳細

クラシック×異色コラボのソーシャル・エンターテインメント!

世界の海へ旅をしたかのような体験へ!


●日時:2022年3月6日(日) 16:30開場 17:15開演予定


●場所:ミューザ川崎シンフォニーホール

※本公演は4歳以上の方に入場いただけます。


●プログラム(抜粋)

スメタナ作曲 連作交響詩「我が祖国」より モルダウ

グリーグ作曲 2つの悲しき旋律より 春

ボロディン作曲 歌劇「イーゴリ公」より だったん人の踊りfeat. 阿波おどり

ドヴォルザーク作曲 交響曲第8番ト長調 etc…


●アノネ音楽教室会員の優待チケットについて

「チケットぴあ」上で選択できる【団体席】が、アノネ会員の方の優待券にあたる項目です。

よりお値段のグレードが上の【VIP席】と同じ席ですが、【団体席】をお選びいただくと、廉価にご購入いただけます。


<例>

【VIP席】の項目をご選択いただくと:合計10,900円

【団体席】の項目をご選択いただくと:合計8,000円

→2,900円割引!

※大人・小人各1名の場合。人数が異なる組み合わせでの購入も可能です。

※【VIP席】のお子さま単体のチケットは異なる金額に設定されていますが、【団体席】の大人のチケットと組み合わせてご購入いただいても連席になりません。


●お申し込み

https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2135951


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コラムに対するご感想などございましたら、

info@anone-music.com まで、ぜひお寄せください♪


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