top of page

代表笹森 1月コラム『理念に立ち返る』


 あっという間に松の内が明け、月末となってしまいました。本年もよろしくお願いいたします。


 三が日明けには、新年第一弾の企画である、実技強化コース『ミュージックアカデミー』を開催いたしました。多くの方にご参加いただき、誠にありがとうございました。


 私自身は弦楽器のコース『お弾き初め(おひきぞめ)』の担当でした。これは、初学者から上級者までが一緒に演奏できるコースです。華やかなソロパートを弾く子どもたちをジュニアオーケストラが伴奏するなど、教室全体の人数や演奏レベルが一定のところまで達しなければ実現できない試みも行いました。開校7年目にして、ようやく開催することができたのです。


 子どもたちからは、憧れのお兄さんお姉さんと演奏できたことについて、たくさんの喜びの声が上がりました。また、ホールにて大人数でアンサンブルすることで生まれる響きの素晴らしさを感じることができたとも聞きます。また、子どもたちだけでなく、講師や保護者の皆さまからも、心温まる時間になったという声が寄せられました。今後も毎年の恒例行事として、多くの方にご参加いただけるものにできればと思います。


 さて、先日とある大きな音楽教室さんから仕事の依頼がありました。”クレド”の作成です。クレドとは、企業の活動や仕事の基準となる信条や価値観、行動指針のことです。外部で行った講師研修を評価していただき、今回の依頼を受けるに至りました。


 音楽教室を経営の観点から見たときに一番難しいことの一つとして挙がるのが、講師のサービスのクオリティコントロールです。多数の講師が在籍している教室では、レッスン内容などのサービスを講師裁量に任せているということも少なくありません。そこで浮上してくるのが、サービスの質の差という問題です。同じ教室の名のもとでも、講師によって差が出てきてしまうといったことです。ここで言うサービスとは、具体的には指導の仕方や講師の音楽的なポリシー、生徒への言葉がけ、保護者に対してのスタンスなど、さまざまです。


 昨今はSNSや口コミサイトに、保護者のリアルな声が多々寄せられています。かなり詳細なものもあり、「◯◯音楽教室に通っている」ということに留まらず、「◯◯音楽教室の△△先生のレッスンを受けている」などと書かれていることすらあります。


 サービスを提供する側が、企業や組織としてだけでなく、そこに従事する個人単位で評価・判断されるということは、音楽教室のみならず、幅広い業種・業態で一層顕著になっています。だからこそ、企業であれば同じ理念のもとでサービスを均一化するということが大切です。均一化といっても、先生の個性をなくせという話ではなく、それぞれ理念やクレドを大事にし、現場で指導する際に扇の要を外さないというイメージです。


 ちょうど先日、アノネ音楽教室でも、実技レッスン講師向けの1日がかりの研修がありました。開校当初に比べ講師が増えたこともあり、理念や行動指針に立ち返る時間にしました。チームごとにディスカッションしたり、挙がった意見を共有したりしました。


 アノネ音楽教室の行動指針はシンプルです。大項目は3つありますが、そのうちの一つは、「教育者の集団であること」です。そうあるために、具体的に下記の2つのことを挙げています。

1. 講師が教育者として研鑽を積み続け、成長している


2. 自分にベクトルを向ける。ネガティブな現象は、全て自分に責任があるものと考える


 1については、勉強会や研修を通じて、組織規模でも常に実施するほど、重要度が高いものとしています。そして、それ以上に大事だと思うのが2です。


 例えば、子どもが忘れ物をしてしまったとき。忘れたのは子ども自身ですが、講師が自分の責任だと思えるかという話です。練習をしてこない。やる気がわかない。ふざけてしまう。全ての出来事を自分に責任があると解釈できるかどうかです。


 自責で捉えることの一番のメリットは何でしょうか。それは、当たり前なのですが、「自分自身が相手に対して支援し続けられる」ということです。


 例えば、子どもに「忘れ物をしちゃ駄目だよ」と言うだけでは、声をかけた講師自身がどうにかできる問題とは捉えられていないでしょう。忘れ物の責任は子どもにあり、忘れ物をするかどうかはあなた次第、という他責のニュアンスがあります。


 逆に、忘れ物をすることは私の責任だと考えることができれば、忘れ物をさせないのも講師の働きかけ次第で変えることができるということになります。

「どうやったら忘れ物をしないで済むか、一緒に考えようか。譜面のここに書いたら毎日見るかな?お母さんに声をかけてもらうように伝えようか?」

といった声かけになるかもしれません。前者の、子どもにただ「忘れ物をしちゃ駄目だよ」と伝えるのとは、大きな違いがあります。もちろん、あくまで子どもが主体であることに変わりはありませんが、講師の意識のもとで変化が起きるということが要点です。

自責の考えに基づくと、最大の利点は「これが駄目だったから今度はこうしよう」と、常に課題達成までの選択肢が広がり続け、子どもへの提案が尽きないことです。


 しかし、他責の考え方であれば、子ども自身が目標達成する手段を考えなくてはいけなくなるので、選択肢もあまり増えません。


 練習の課題一つ取っても全く同じです。「なんで弾けないの?」と伝えるだけでは、子ども自身が練習方法や練習プランを考えなければいけなくなります。それは、冷静に考えれば非常に難易度の高い要求です。低学年ぐらいまでであれば、「忘れ物をしてはいけない」と言われた瞬間は覚えていても、次の日には忘れて終わりといったことも、ごくごく普通です。そのように、忘れ物をしてしまったり、うまく弾けなかったりする理由が講師自身にあると考えられたとき、講師側からどんどん提案することができます。


 以前外部で研修した際にこんな話を聞きました。あるとき、子どもがレッスンをすっぽかしたそうです。そして、講師が保護者の方に連絡すると、「ああ〜、遊びに行って忘れていると思うので、今日は休みます」という答えが返ってたそうです。それを聞いた講師さんは、「レッスンをそんな簡単なものと捉えているのであれば、他の教室で習ってください」と伝えたということでした。