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代表笹森 11月コラム

 先日、個人実技レッスンの発表会が全日程分無事に終了しました。ご理解、ご協力いただいた保護者の皆さま、誠にありがとうございました。


 輪が広がり、通ってくれる子どもたちが増えてきたことから、今年は過去最大の開催規模となりました。ホールを取る際には抽選を受ける必要があるため、必要開催数分の会場が準備できるか不安でしたが、結果的には、延べ23会場で、2か月間にわたって開催し、300名以上の子どもたちをステージに送り出すことができました。何よりも、1年に1度の晴れの場を、大きな支障なく子どもたちに届けられたことに、ホッと胸を撫で下ろしています。


 加えて、ご家族の皆さまからたくさんの喜びの声をいただきましたが、これほど講師冥利に尽きることはありません。喜びの声に限らず、今回アンケートにご記入いただいた貴重な意見の数々は、私たちの指針にもなる財産です。発表会をはじめとしたすべての場面でいただいているご意見は、スタッフ一同で検討のうえ、運営マニュアルに落とし込み、最大限活用してまいります。


 こんなハプニングがあった。あんな失敗があった。こういった工夫をすればもっとよくなるのではないか。私たちが気づけていない至らぬ点について、意を決して、気遣いを込めながら丁寧に書いてくださった方もいることと思います。当教室が皆さまの温かなご支援に支えられていることを、改めてひしひしと感じる今日この頃です。


 さて、今週から冬のミュージックアカデミーの募集が始まりました。今回のミュージックアカデミーは、年が明けてからスタートすることとなりました。ピアノ科は、個々の実技を磨く強化コース。1日に何度も、レッスン、自主練、そして座学を繰り返すというなかなかハードなスケジュールですが、その都度様々な講師から手解きを受けられるので、楽しく、着実に上達することができます。弦楽器科は、アノネ音楽教室としては初めての試みとして、初級者から上級者までが大ホールで一堂に会する「お弾き初め」を行います。簡単なリズムのみを演奏する初級者向けのパートから、スズキ・メソードの教本や、当教室のジュニアオーケストラで扱う曲を演奏する上級者向けまで、それぞれのレベルに応じたパートをご用意しているため、年中長コースや低学年のグループレッスン生や、弦楽器を習い始めたばかりの初心者の方にも参加していただけます。お兄さんお姉さんの上手な演奏を聞いてモチベーションを高め、大合奏の一員に加わる喜びを知ってもらえるよう願っております。どうぞ奮ってご参加ください。


ミュージックアカデミー 2022WINTER 特設ページはこちら!


 話は変わりますが、先日のレッスンで起きたある出来事をご紹介します。


 その日、高学年のAくんはレッスン時間になっても現れませんでした。朝のレッスンだったのですが、お母さまからの電話によれば、布団から出てこようとしないとのこと。

「弾けないところがあるから休む、と当人が言っているのですが、どうすれば良いですか」

と聞かれたので、

「思っていることがあるなら自分から電話するように、Aくんに伝えてもらえますか?」

とお答えしたのですが、結局折り返しの電話はかかってきませんでした。その後、お母さまが何とか彼を説得して、レッスンに連れて来られました。

「なんでレッスンに来たくなかったの?」

と聞くと、

「弾けなくて悔しかったから」

とAくんは涙をぼろぼろこぼします。私は、

「そうか、どこが弾けなかったの?どうやって練習したの?」

と、続けました。


 Aくんの話を聞く限りでは、確かに毎日長い時間チェロを触っているようでした。しかし、弾けない箇所の練習はどうでしょうか。どうも自分の技術不足に向き合っておらず、弾ける箇所ばかりこなしているという印象を受けました。


 Aくんにはちょうど1週間前、運指のトレーニングのための課題を出していました。この課題は、指を早く動かすシンプルなトレーニングですが、練習なしで簡単に弾きこなせるものではありません。慣れないと指がこんがらがるからです。とはいえ、毎日1分取り組めば1週間で必ずできるようになる課題でもあります。Aくんはこの宿題をやっていませんでした。やるべき課題をサボったせいで行きたくなかった、というのが本当のところでしょう。


 ここで大事なことは、子どもに「本音を知っている」「言い訳を見抜いている」ことを盾に正論を突きつけるのではなく、子ども自身が正直な気持ちになって、どうすればよいか言語化するのを、脇で手助けしてあげることです。先生である私が「めんどくさかったんじゃないの?」と言えば、彼はその言葉に乗ってきて、考えるのを止めてしまいます。弱い自分に向き合って、本当の気持ちを言葉にするのは、相当な勇気がいることですから、一つひとつ情報を整理して、彼が本心を振り返れるようサポートするよう心がけました。

「悔しいっていう気持ちは、努力をしっかりしたときに感じるものだと思うんだけど、今回はその気持ちで合ってる?」

「わからない、違うと思う。努力は足りてなかったと思う」

「わかった。じゃあその日の練習の区切りや、止め時を教えてもらえる?今日はやりきったと思って終わったのなら、これは納得して止めてるよね。できてないけど、『まあいっか』で終わったのなら怠惰、怠け。そもそもめんどくさいからやりたくないと思ってやらなかったのなら、逃げだよね。どういう気持ちで練習を終えたのか、先生にはわからないから、思い出してみてほしい」

するとAくんは、後者の2つだと認めました。

「だとしたら、悔しい気持ちじゃなくて、他の気持ちが原因でレッスンに来られなかったってことはある?」

重ねて聞くと、

「課題をさぼったから来たくなかった。逃げたかったからだと思う」

と言う言葉が出てきました。

こんなふうに正直な気持ちを言葉にできたなら、もう100点満点でしょう。

「よかった。『逃げたかった』という気持ちに自分で気がつけたんだね」

とさらっと伝えて、その日のレッスンを終えました。


 高学年以降の子どもたちの難しい部分。それは、私たち大人が彼らの言葉を信じてあげたい一方、彼らにはちょっとした言葉の綾で取り繕うほどの知恵が備わっているということです。疑わずして本音を引き出していくことは、その後の信頼関係にも大きく影響してくるでしょう。


 そこで私からお伝えしたいのは、ぜひ講師や教室長を頼ってくださいということです。思春期に入るとそれまでと気持ちや心の動きが大きく変わり、外の大人の言うことを聞くようになります。時には友達のようであり、先輩のようでもある。そのように、文字通りの”大人”ほど遠くではなく、でも子どもたちが「話を聞いてもいいかな」と思えるような絶妙な距離で、私たちは彼らに声をかけていく必要があります。だからこそ、ご家庭でのお子さまの些細な様子や変化についてもぜひお伝えください。皆さまとご一緒に、お子さまのことを二人三脚でサポートしていくことができれば幸いに思います。


アノネ音楽教室代表 笹森壮大

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コラムに対するご感想などございましたら、

info@anone-music.com まで、ぜひお寄せください♪

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