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執筆者の写真広報 株式会社グランドメソッド

代表笹森 10月コラム

 第18回フレデリック・ショパン国際ピアノ・コンクールをご覧になられた方はいらっしゃるでしょうか。今回は予備予選から全編YouTube LIVEで配信されたこともあり、クラシック音楽界を超えた世界的な盛り上がりを見せていました。


 日本からの参加者でこの度入賞した、2位の反田恭平さんと4位の小林愛実さんには、心からの賛辞をお送りしたいと思います。特に2位入賞は1970年の内田光子さん以来約50年ぶりの歴史的快挙で、非常に喜ばしい出来事でした。とにかく音楽コンクールとして世界最難関の場で、アジア人の優勝者は1927年の初開催から約100年で過去3人だけ。また、第14回優勝者の中国人ピアニスト ユンディ・リさんまでの15年間は、1位が不在だったほどです。だからこそ、今回の切磋琢磨ぶりにはまばゆいものがありました。


 今回の2位受賞者である反田さんは、私と母校が同じでありつつ直接の知り合いではありませんが、数年前からその活躍を拝見してきました。過去のインタビューでは、モットーとして「その日練習した最後の音、悔いがなく、明日死んでもいいように」と言っていたことを覚えています。そんな考え方ともつながるのかもしれませんが、なかなかの苦労人で、留学1年目の費用は自分で工面したり、驚くべきことに実家では電子ピアノ時代が長かったりしたそうです。音楽家の背景として一般的にイメージされるような「裕福で、子どもの頃から防音室やグランドピアノが揃っている」というような家庭環境ではなかったようです。アノネの坂村らは学生時代から接点があるそうで、数年前既にピアニストとして活躍していた反田さんの申し出から、反田さんが母校の学園祭で坂村が作曲したオーケストラ曲を指揮をして大盛り上がりしたというエピソードもあります(反田さんは指揮も相当の腕前だそうです。今回のコンクール後のインタビューでも野球の大谷翔平を挙げ、「ピアニストと指揮者の二刀流を目指す」と言っていました)。そんなこともあり、コンクール期間は画面越しに家族で応援させてもらいました。


 私にとってのショパンコンクールといえば、学生時代に2000年の優勝者ユンディ・リさんの映像を見て感動し、初めてピアニストのDVDを購入するきっかけになったという思い出もあります。弦楽器以外の楽器への関心が湧き上がったのも初めてのことでした(最近は芸能人への風当たりが強い政情にあって捕まってしまったという残念なニュースがありましたが)。


 今回は予備予選から多くの日本人コンテスタント(参加者のこと)が残って活躍していましたが、世界最高の舞台での日本人の活躍に、教育現場の人間である私としては興味が尽きません。音楽以外でも、ボクシングの井上尚弥選手や、ゴルフのマスターズにおけるアジア人初優勝者の松山英樹さん。そして、反田さんも挙げていた野球の大谷翔平選手。歴史に残る偉業をオンタイムで見られる喜びは大きいものです。


 スポーツや芸術の分野は、欧州や旧共産圏では国策として推し進められていたことから、歴史的にアドバンテージがありました。体格差が有利に働くことも少なくなかったと思います。しかし、昨今はこれらの分野でもますます日本人がトップフィールドで活躍しています。人種や国籍とは別に、教育の質が大いに影響を及ぼしているのではないでしょうか。


 誰もが等しく多くの情報にアクセスでき、様々な経験できる機会が与えられたとき、子どもの成長に大きな差をもたらすものは何なのでしょうか。例えば、以前のコラムでお伝えした”オフザフィールド”(フィールドでプレイしない時間の過ごし方)の概念や、家庭環境。そして、指導者の力や人柄といったことがあるでしょうか。特に、その時々の大人との出会いは、非常に影響が大きいようです。一流のプレイヤーが皆初めからプロ養成所で育ったかというとそうではなく、多くは近所の先生に習い始めたという調査結果もあります。

 例えば大谷選手を取り巻いてきた大人や年長者にもよく当てはまります。子ども時代には社会人野球をしていたお父さんが熱心に指導したわけですが、「プロに育てようと思ったわけではなく、野球の楽しさも教えたつもり」なのだそうです。また、現在同選手が活躍するロサンゼルス・エンジェルスのマドン監督、日本ハム時代の栗山監督、花巻東高校時代の佐々木洋監督。特に佐々木監督が大谷選手に与えた”曼荼羅チャート”は、同選手がここまで躍進する基盤になりました。ピッチャーと外野手の”二刀流”など前例を見ない活躍には、前述の3監督の存在が大きいのではないでしょうか。3人に共通するのは、指導者であることに留まらず、良きサポーターや理解者であることです。「ああしろこうしろ」ではなく、どうやったら成功できるかをコーチ陣全員と一緒に考え、悩み尽くし、議論する。選手を尊重し一緒に考える横並びの姿勢は、イメージしやすい鬼コーチのそれとはかけ離れており、プロの監督やコーチであってもそういった姿勢であることに驚きます。彼らの考え方や育て方を扱う動画がYouTubeに埋もれるほどあるので、日々お宝探しをしていますが、あまりに多くの学びが得られます。

 

 さて、話は変わりますが、先日私のチェロの門下の発表会が終わりました。個人実技レッスンの発表会のシーズンはもうひと月ほど続きますが、これから出演する方々の成功も願っています。


 実は、今年の発表会は私にとってこれまでで一番落ち着かないものでした。子どもたちが無事演奏できるかという不安や緊張を一緒に感じながらも、彼らの演奏の素晴らしさや情動的な表現に心を動かされ、感動、不安、緊張といった様々な感情が渦巻く時間でした。ある子は発表会当日にサッカーの試合があり、車の中で泥を払い着替えて、滑り込みでリハーサルをして演奏していました。またある子は、現在小学6年生で間もなく中学入試があるにもかかわらず朝練を続けて頑張ってきました。他に、受検休会が明けたばかりの子や、緊張と不安で気持ちがあふれてしまう子など、十人十色。様々な背景や事情を各々が背負いながら精一杯頑張る姿に、今年もまた大きく心を動かされました。また、音楽合宿など様々なイベントで長年関わってきた他の講師の生徒の成長も、我が門下のことのように見ていました。当教室に長く通うある子のお母さまからは「アノネが始まったときの弦楽器の発表はずっと『キラキラ星』ばっかりだったけど、こんなにみんな弾けるようになって。成長するものですねえ」とお伝えいただきました。3か月の成果だけではなく、開校から続く長い年月における成長までをも一緒に感じられた、あたたかい時間でした。


 最後に一点お知らせがございます。アプリ教材『Primo』内で作曲家の伝記を読んだり演奏を鑑賞したりできる『おぺら』の有料部分を、全面的に無料で開放することにいたしました。当アプリは、本当に必要な基礎を扱う問題が詰まった教材です。これまでは、その大事な基礎に取り組むうえでのモチベーションアップの一環として、日々問題に取り組むと前述の『おぺら』が部分開放されるようになっていました。しかし、『おぺら』全編が開放されるようになれば、かえって意欲の向上に寄与できるのではないかと話し合い、今回の仕様変更が決まりました。伝記はもちろん、トップクラスの演奏家による演奏を、これまで以上に子どもたちに堪能してもらいたいと思っております。今までアプリ内で購入していただいた方にもその分を還元できるよう対応してまいりますので、情報をお待ちいただければと思います。また、別途CDや伝記のテキストという形でも注文していただけますので、ご希望の方は担当教室長・実技レッスン講師までおっしゃってください。


 今年も残り2か月を残すところとなりましたが、これからの季節は再びインフルエンザが流行する可能性もあるそうです。凡事徹底で、早寝早起き、手洗いうがいといったことを大切に、健康第一で過ごしてまいりましょう。


アノネ音楽教室代表 笹森壮大


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コラムに対するご感想などございましたら、

info@anone-music.com まで、ぜひお寄せください♪


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