代表笹森 4月コラム
更新日:2021年5月1日
新年度が始まりひと月が経とうとしていますが、改めましてご進級、ご進学おめでとうございます。昨年のこの時期はといえば、私たちがそれまで経験したことのなかった新型コロナウイルスの感染拡大に対応する真っ只中。あの時期は、当時新たな試みであったオンライン授業・レッスンの準備をただただ必死に進めていましたが、今ではいつでも迅速に授業形態を切り替えられる体制が整いました。アノネ音楽教室が所属する花まるグループ代表の高濱のコラムでも言及しておりますが、教室内(講師や子ども)、社内(社員間)での感染ともに、おかげさまで今のところ起きておりません。保護者の皆さまのご理解とご協力があるからこそ感染症対策を徹底し続けることができていますが、まさにその賜物ほかなりません。いま一度心から感謝をお伝えしたいと思います。そして、教室長・講師やスタッフ一同、今も事務所に出社できる人数の制限やゾーニングなどのルールを徹底中です。今後万が一感染が起きてしまった場合も「拡大させない」ということを目指し、子どもたちや保護者の皆さまの安全を大切にし続けてまいります。
さて、先日は東京芸術劇場で行われた『世界子ども音楽祭 2021 in 東京 ─ 仲間とともに奏で歌い、困難を乗り越える』というコンサートを鑑賞してまいりました。実は、このコンサートを主催した「エル・システマジャパン」(世界の70以上の国や地域で音楽教育プログラムを行う組織の日本法人)には、私たちの教材開発部門である(株)国際音楽教育研究所の教材を採用していただいていて、そのご縁でご招待を受けたのでした。このコンサートは、世界中の「エルシステマ」の子どもたちを中心として、生演奏にオンライン中継や映像の上映を交えて進められていました。どの演奏も強く印象に残るものばかりだったのですが、なかでも冒頭で出演していた団体「東京ホワイトハンドコーラス」の合唱には、私自身強く魅了されました。その団体は、視覚・聴覚障がいや自閉症、発声に困難を抱える子どもたちが集まっていて、障がいがある子どもたちが本格的な芸術に取り組める昨今稀有な団体だと紹介されていました。そのこと自体ももちろんすばらしいのですが、私は彼らの演奏が持つエネルギーそのものに心を打たれました。彼らの演目は、モーツァルトが作曲した祈りの言葉による合唱曲「アヴェ・ヴェルム・コルプス」です。まさに祈りのように穏やかで、透き通るようなハーモニーを持つこの曲に、内なる力強さを宿す彼らの歌声が映えていました。それは、聴いたことのないようなすばらしい演奏でした。その後も、子どもたちによるオーケストラの演奏などが続き、アノネ音楽教室のコンサートと重なるものがありました。
私たちはというと、例年開催していた子どもたちの合唱をフルオーケストラの伴奏が彩る『クリスマスコンサート』や『スプリングコンサート』について、昨年の休止期間を経てどうにか今年こそ実現できないか、つい数週間前まで検討しておりました。しかし、首都圏の各ホールが取る感染症対策のルール上、舞台での出演者同士の距離を2メートル以上取らなければいけないことになっています。そうすると、舞台に上がることができる人数は、アノネ音楽教室に通う全生徒の3分の1にも及ばないことになり、従来のような形のコンサートはどうしても開催が難しいということが分かりました。だからといって、「仕方がない」と諦められるわけがありません。
従来のようなコンサートの開催が難しいということがわかった後も、私たちには何ができるのか考え続けていました。子どもたちが、年に1度の発表の機会として、みんなで一丸となって一つの音楽を創り上げる喜びや、アンサンブルの醍醐味を、今年度も絶やさず経験できる方法はないか。全教室長・講師・スタッフがそんな思いで、さまざまなアイデアを出し合った結果、年間を通じて、安全でありつつ、わくわくした気持ちで取り組めるような新しい形の特別授業の枠組みが見えてきました。全員がそれぞれの場所から歌って、演奏して、みんなで音楽作品を創り上げる。そして、作品ができ上がったら、情勢に応じて可能であれば会場に集まっての大スクリーンでの上映、またライブ配信を実施し、講師陣の演奏も交えて集大成の会を行うということに至りました。
その特別授業は、題して『アノネミュージックフェスティバル』。みんながお祭りのように楽しみながら取り組めるようにという願いを込めました。今までにない新しい形の音楽祭を、子どもたち一人ひとりと一緒に創り上げていきたいと思っています。
『アノネミュージックフェスティバル』では、まず、昨年度制作した、15か国語での合唱とオーケストラによる映像作品『アノネミュージックプロジェクト』(