熱く燃えた夏が終わりました。この1か月強で、花まるグループではサマースクールを、アノネ音楽教室では音楽合宿を開催し、約60コースの全行程が無事完結しました。このコロナ禍に、私たちを信じてお子さまを送り出してくださったご家族の皆さま、本当にありがとうございました。
先日は、この夏の締めくくりとして、一部の花まるグループ社員で、サマースクールでお世話になっている宿に挨拶回りの様な形で再び現地に行ってきました。その夜、ある山の上にある天文台の話になりました。花まる学習会のサマースクールでお世話になっている天文台のお姉さんの話がとにかくおもしろいというのです。曇り空で全く星が見えなかったのですが、話だけでも聴く価値があるということで、天文台に行くこととなりました。
天文台のガイドを務めるお姉さんは、まるで花まる学習会の授業を行う教室長のようにはつらつとして、暗闇の中でも笑顔だとわかるような方でした。
ガイドのお姉さんに、まず天文台にある2メートル以上もありそうな望遠鏡を見せてもらいました。その日は曇り空でドームを開いて観察することはできませんでしたが、晴れていれば様々な恒星や惑星はもちろん、土星のリングも見ることができるそうです。
その後はドームの裏に行き、ドームの壁に投影されたプラネタリウムのような映像を見ながら、解説をしていただきました。
従来、星座の起源は約5000年前、メソポタミア地方の羊飼いが、動物や英雄たちの姿を星空に描いたことだとされてきました。しかし、最近では新説が提唱されています。その一つに、有名なフランスのラスコーの壁画(1万5千〜1万年前)に、夏の大三角などを模写したと思われるものがあるという説があります。
いずれにしても、星座という概念は各地の文明に広まり、やがて古代ギリシャにも伝来しました。詩人たちの話の中に取り上げられ、ギリシャの神話や伝説と結びついていったそうです。メソポタミアやギリシャがある北半球で見える星座は44ぐらいあったそうで、近代の天文学で定められている88星座とは約40の差があります。
16世紀頃を過ぎ、望遠鏡の発明や大航海時代が重なります。ヨーロッパの人々は南半球にも行くようになり、南半球でしか見えない星空における星座が取り入れられました。こうして近代の88星座の確立に向かっていきました。大航海時代に船乗りたちが知った、カメレオン、かじき、くじゃく、インディアンや、望遠鏡、コンパスなどの新しい道具が星座になったそうです。
88星座というのは、国際天文学連合が制定したものですが、世界中のそれぞれの国や地域特有の星座も存在しています。例えば、日本ではあのオリオン座が"鼓星(つづみぼし)"と言われているそうです。鼓は、能などで使う肩に乗せる太鼓ですね。
さて、興味深い話をたくさん聞かせていただき、携帯にメモした内容をそのままこのコラムに書いているわけですが、私の中で特に響いたことを紹介します。それは、
「星座というのは、歴史から入ってもいいし、神話から入ってもいい。ロマンから入ってもいい。そうやって文化を通して学ぶことができる。いろんな入口があって、いろんな形で好きになれるんです!」
というガイドのお姉さんの言葉でした。
全く同じ想いでこの夏の音楽合宿を企画していたこともあり、心の中で大きくうなずきました。この合宿に、どれだけ"楽しい"を散りばめられるか。この合宿に、音楽を好きになれるいろいろな入口をいかに作ってあげられるか。そういった想いです。
友だちと一緒に練習することでの切磋琢磨。部屋で口ずさむちょっとしたメロディ。楽器作りの時間。連弾をする時間。アンサンブルの時間。アクティビティや自由時間を通して、アノネ音楽教室を居場所として好きになることもいいかもしれません。音楽仲間や先生と練習の合間に楽しむ花火や水遊び、そして自由時間すら、音楽をもっと好きになるきっかけになり得ます。
スタッフである大人の役割は、時間や生活を管理することではありません。音楽に包まれた時間の中でたくさんの楽しさや充実感、喜びを感じられるように。そして、演奏の達成感や高揚感を存分に味わえるようアシストしていくことが、私たちの役目です。
最後に、8月に信州で開催した音楽合宿のハイライトは、夜の中学生タイムでした。合宿には、アノネ音楽教室の第1, 2期生を中心に、多くの中学生が参加してくれました。部活や塾で音楽から一番遠のきやすい時期ですが、この時期に音楽仲間がいることは、一生音楽を続けるほどのモチベーションにもつながります。
現に、"誰かがいるから"ということが、部活や習い事に行く大半の理由になる時期でしょう。私たちはさらに、ただ友だちができればよいということだけではなく、音楽を中心とした関係づくりの場を築き上げられたらと考えています。
今回も、本当に中学生たちがおもしろいと思える時間をプロデュースしてあげられるか、最後まで悩み、考え抜きました。そんな私たちの想いが実ったのか、合宿が始まれば、皆それぞれが腹の底から笑い合い、等身大の姿を見せていました。
普段の授業では、異性に対し
「興味ない!」
と言い放つ彼ら彼女ら。しかし合宿期間中の夜は、お互いの部屋に誘いに行って、街を一望できる一番高い丘の上に行き、満天の星空のもと男女混ざって仲良く語り合っていました。そんな姿がまぶしいほどかわいらしく、青春時代の始まりが感じられました。
帰宅の前夜である3日目の夜、ある男の子が
「俺好きな子できた!」
と言ってきたときには、内心は微笑ましくも、
「気が早い」
とたしなめたものです。彼らのほとんどを小学校低学年から見てきましたが、その輪は続き、広がり続けています。親心にも近い心情で、このつながりがずっと続くようにサポートしていこうと決意する、最高の夏でした。
アノネ音楽教室代表 笹森壮大
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