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リレーコラム:2025年4月 『海外演奏旅行に行ってきました!』勝野 菜生 (かつの なお)

更新日:4月30日

執筆者紹介:勝野 菜生(かつの なお)

 ピアノ・作曲の個人実技レッスン講師、年中長総合コース ピアノグループレッスンの主導講師、高学年総合(エキスパート)コースやユースセッション(中高大学生ユースセッション)コースでの音楽史・音楽理論・ソルフェージュ講義主導、教材開発、そして合宿や海外演奏旅行、クリスマスコンサートの企画運営など、幅広い範囲を担当。「なお先生」や「かっちゃん」の名で親しまれています。


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『海外演奏旅行に行ってきました!』


 4月初旬、アノネ音楽教室として初の海外演奏旅行を無事に終えることができました。  参加してくれた子どもたち、送り出してくださった保護者の皆さま、そして「応援していますよ」と励ましの声を届けてくださった皆さま、本当にありがとうございました。

 今回の旅の地は、オーストリア・ウィーン。生徒と帯同するスタッフで構成された“生徒グループ”は、小2から大学生までの生徒約60名、大人約20名という編成からなります。小学生と中学生以上の生徒の割合はおおよそ半々といったところ。これだけの大所帯で、しかも年齢の低い子どもたちを含む団体の移動は珍しいようで、空港を始め、各所で注目を集めていました。スタッフはいつも以上に安全管理に注意を払い、アンテナを張る場面も多くありましたが、行く先々で「子どもがいっぱいで可愛いらしいわ!」「なんて良い生徒さんたちなのでしょう!」と温かく迎えられ、ありがたい気持ちになりました。


 旅行中はどこを切り取っても特別な瞬間でしたが、中でもやはりトップレベルに輝いていたのはミノリーテン教会で開催した演奏発表会でしょう。

 ウィーンの中心街に突如姿を現したミノリーテン教会。ゴシック建築と呼ばれる複雑な様式美の建物でありながら、精緻を凝らした彫刻や装飾は控えめで、外観はスリムな印象さえ漂っていました。しかし一歩聖堂に足を踏み入れると、目の前に広がったのは、高く伸びる天井、きらびやかなステンドグラス、大きな祭壇と宗教画。その荘厳な雰囲気に、こんなところで本当に演奏会をしていいものかと感じるほど、圧倒されました。

 子どもたちは、ミノリーテン教会の圧倒的な存在感にも負けない、素晴らしい演奏と合唱を披露しました。教会の力強い響きも味方してくれましたが、何より本番までに積み重ねてきた努力がしっかりと実を結びました。今回の合唱では、アノネ音楽教室としては初めて4声(ソプラノ/アルト/テノール/バス)の演目に挑戦しました。他のパートの声を聴きながら正確な音程で歌うこと自体難しいのですが、それに加えて事前の練習会では全員で注意深く一つひとつの音の表現も突き詰めていきました。また、弦楽アンサンブルに参加した子どもたちは1年かけて準備を積み重ねてきました。中でもコレッリの『クリスマス協奏曲』は20分近い大曲。ソロを担当した子もおり、さぞ緊張しただろうと思っていました。

 しかし終演後、子どもたちに「どうだった?」と聞くと、「すごく響いてびっくりした!」とホールいっぱいに広がる音に驚いた子もいれば、「ソロを弾くのが楽しかった!」と、ひときわ誇らしげな笑顔を見せる子もいました。終演後に感極まったのか、見に来ていた家族のもとへ自ら駆け寄り、ぎゅっとハグを交わす子や、感動のあまり涙が止まらない子たちの姿も。また、私がある子に「これだけ大勢で歌っているのに、まるで一人で歌っているような一体感だったね!」と感想を伝えると、「それってウィーンフィルと一緒じゃない?」という言葉が返ってきました。私たちは演奏発表会の前日に楽友協会でウィーンフィルの演奏を聞いたばかりだったのですが、その子が言う通り、ウィーンフィルの一糸乱れぬ演奏にも共通する一体感が、子どもたちの演奏にも確かにみなぎっていたのでした。

 演奏会にはアノネ音楽教室の関係者だけでなく、ウィーン在住の地元の人たちも足を運んでくださいました。「アンコールで歌った曲のタイトルを教えてほしい」と話しかけられたり、「素晴らしい演奏でした」と涙ながらに感想を伝えてくださった方もいました。総じてとても素晴らしい演奏会で、大成功をおさめた子どもたちには誇りを持ってほしいと思います。


 さて、ここからは、個人的に印象に残っていることを2つご紹介します。

 ひとつめは、中学生以上の子どもたちの活躍のことです。

 今回、中学生以上の子たちには事前に「良い旅行を作るために、自分にできることを探して行動してみよう」と伝えていました。その一環として、小学生の子とバディを組んで、旅のあいだ年下の子どもたちの手助けをお願いしました。

 私たちがこうした取り組みを取り入れた背景には、この旅行を通して彼らに「誰かのために自分にできることを考えて行動する力を育んでほしい」という思いがありました。アドラー心理学で有名なアドラーは、「人間の幸福は、自分が共同体の中で“役に立っている”と感じられるかどうかにかかっている」と説いていますが、まさにそんな力をつけて人間力を高める機会にしてもらいたいと考えていたのです。

 実際に、彼らは本当によく動いてくれました。ある中学生は、ささいなことで喧嘩してしまった小学生たちのあいだに入り、自分の話をして笑わせようとしたり、一緒にゲームをしようと誘ったりして、自然と仲直りできるように導いていました。

 高校生のお姉さんに髪を結んでもらったことが嬉しかったと言う小学生の女の子は、帰国後に「4年後は私があのお姉さんみたいになるんだ!」と目を輝かせていたそうです。その高校生のお姉さんは、渡航前「8日間もたくさんの人の中で、しかも年下の子もいる中で心身ともに元気でいられるだろうか」と不安を口にしていました。個人的な不安を乗り越え、小学生の子にそう言わせた彼女は、また一歩人間力を高め、自分に自信が持てるようになったのではないでしょうか。

 旅行のあいだ、一人ひとりが自分とは違う誰かを思いやり、自然なかたちで関わろうとしていました。その姿勢から、私たち講師と同じ目線で、彼らが他の子たちを見てくれていたことがわかります。憧れと信頼でつながる関係性の中で、優しさのバトンがしっかり受け継がれているのを心から嬉しく思いました。


 そしてふたつめは、ある夜のバスの中での出来事です。

 帰国前日の夜、最後の夕食を終えて帰りのバスに揺られていると、誰からともなく「演奏発表会の最初の曲から歌っていこうよ!」という声があがり、自然と大合唱が始まりました。

 それは、誰かに言われたからではなく、ただ歌いたいから歌う、楽しいから歌う。そんな純粋な気持ちから生まれたものでした。疲れているはずの時間帯なのに、子どもたちの声はとても力強く、まるでもう一度発表会をしているかのようでした。

 その様子を見て、私は心からこの企画に関わることができてよかったと思いました。毎日の積み重ねが、こんなふうにかけがえのない瞬間につながることがあるのだと、あらためて感じました。きっと、こういう瞬間のために人は日々を大切に積み上げていくのだと思ったのです。


 今回の旅行で、私自身「音楽をやっていてよかった」と何度も感じました。そして「この世にこんなに美しいものがあるんだ」とも。

 それは、子どもたちや保護者の皆様、アノネの同僚、そしてこの旅行の実現にあたって協力してくださった多くの方々との関係の中でこそ生まれたもので、一人旅では決して得られない感動でした。旅行中、ある子に「素晴らしい経験をありがとうございます」と言われましたが、私たちも、子どもたちのおかげで得難い経験をさせてもらったのです。


 アノネ音楽教室は、日々のレッスンやイベントを通して音楽の素晴らしさを発信し、それをともに味わうための仲間づくり、人間力を育む場でありたいと思っています。また、この夏も毎年恒例の音楽合宿が待っています。子どもたちがさまざまな人との関わりの中で「音楽っていいな」という気持ちを伸ばし、新たな生きる力をたくわえられるように。私自身も、いち講師として、できることを考え続けていこうと思います。


アノネ音楽教室 勝野 菜生(かつの なお)- ”なお先生”


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コラムに対するご感想などがございましたら、

info@anone-music.comまで、ぜひお寄せください♪


 
 
 

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