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リレーコラム:2024年8月 『未来への道しるべ』村井 美月(むらい みづき)

執筆者紹介:村井 美月(むらい みづき)

 専門はピアノの演奏と、みんなで音楽を奏でる”アンサンブル”。子どもたちからは「みづき先生」と呼ばれています。

 アノネ音楽教室では、ピアノの実技レッスン講師と、集団音楽教室『小学生ベーシックコース』『年中長コース』の教室長を務めています。さらに、花まる学習会でも教室長として集団授業を担当しています。

 学生時代から長年、学童保育や学習塾、音楽教室のアルバイトをしていたほど、子どもたちとワイワイ楽しく過ごすことが大好き。バイタリティにあふれる、エネルギッシュな先生です。アノネ音楽教室に数人いるみづき/みずき先生たちのうち、唯一「ず」ではなく「づ」と書くそうです!


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『未来への道しるべ』


 少し前のことになりますが、この夏の始めは東京都知事選が大変な盛り上がりを見せました。ここでは私自身が誰を支持したかという話はあえてしませんが、魅力的な候補者たちは確かにいたように思います。


 たとえば、「テクノロジーで誰も取り残さない東京へ」と訴えたAIエンジニア安野貴博氏の戦いぶりには、同世代として大いに勇気をいただきました。ご自身の知見と才腕をそのまま打ち上げた形の政策には相当なインパクトがあり、得票第5位とはいっても、いい意味で深い爪痕を残したのではないでしょうか。昨年は、自分の声をリアルタイムで岸田首相の声に変換するマスクを披露され話題になりましたが、『名探偵コナン』や『ドラえもん』といった作品に登場しそうなハイテクなアイテムを本当に発明してしまったことにも、大きな驚きがありました。さらにSF作家としても受賞歴があるとのこと。そういったエピソードからは、楽しみのなかで想像をふくらませ、それを現実にしてしまうような才覚と行動力が伝わります。


 “ふくらませる"といえば、私が担当するクラスの一つである花まる学習会 年中コースで、最近風船をテーマとした特別授業を行いました。私自身、大人になったいまでも「風船で遊ぶ」と聞けばわくわくせずにはいられません。教室の子どもたちからあがる「早くやりたい!」と言う声には、心から共感していたのでした。


 風船で遊ぶと言っても、初めからふくらんでいるわけではありません。まずふくらませるところからスタートし、どのようにすればうまくふくらむか試行錯誤していきます。多くの子にとって初めての経験です。そうやってふくらませた大事な自分の風船を飛ばしてみると、ボールとは違ってふわふわと動き出します。そんな非日常的な風船の様子に目を輝かせる子どもたちもなんとも愛らしいのですが、「わあ!」と感動を見せたのは一瞬のこと。次から次へと、どんどん新しい遊びを編み出していくのでした。一人で5つも6つも風船を持って顎でも抱えてみたり、「20回落とさない!」と手で突き始めた風船を、しまいには頭を使って上手に”ヘディング"しはじめたり、口から息を吹いて飛ばしたり… 電池も複雑な機構もないシンプルなゴム製の袋から、彼らは自分たちの力で楽しい空間をつくり出してしまっていたのでした。風船は、創造性、判断力、運動能力と、子どもたちのさまざまな可能性を引き出してくれる、素晴らしい教具なのだと、そんな姿を見るたびに痛感します。そして、子どもたちが遊びの天才なのだということも、この時間を通して改めてよく感じました。


 一方で、いまの私たちの周りは、”わくわくさせてくれるもの"であふれています。アミューズメント施設、テレビ、映画、動画、アニメ、ゲーム… さまざまなエンターテイメントがあって、選ぶのも難しいことがしばしばです。クオリティの高いものが多く、世界観も多種多様。私自身もよく楽しませてもらっていて、創造性を刺激してくれるものであることは確かです。しかし、ともすれば、できあがったものに遊んでもらうばかりになってしまうということもあり得ます。与えてくれる刺激が強く、ユーザー側が能動的になる必要がないことも多いのです。少々乱暴なことばかもしれませんが、思考停止でも容易に楽しむことができてしまうのではないでしょうか。


 冒頭でお話しした安野氏をはじめ、AIについて議論になる際多くの方がおっしゃっているのは、どんなにAIが素晴らしい働きをしても、最後に意思決定をするべきなのは生身の人だということです。たとえば、自動生成AIの代名詞 ChatGPTを積極的に活用するコンサルティング企業、株式会社カクシンの代表 田尻望氏は「『Chat GPTが言っているから』という言い訳はナシ。自分のロジックや感性で話させるのがいい」と説いています。これからどんな力を持ち合わせていくといいのかのヒントが、こういった議論のなかに大いにありそうです。


 もしかしたら、いまこの時代の先端を力強く歩んでいくうえでの道しるべとして、ITリテラシーやデジタルに関する知識・技術以上に大切な何かがあるのかもしれません(芸術のやりがいがますます出てきているとも思いませんか…!)。アノネ音楽教室の子どもたちとは、スピーディーに変化する世の中にあって新しいことを学んだり楽しんだりしながらも、偉大な作品・楽曲の美しさや表現についてじっくりと探究し続けたいと思っています。



アノネ音楽教室 村井 美月(むらい みづき)- ”みづき先生”


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コラムに対するご感想などがございましたら、

info@anone-music.comまで、ぜひお寄せください♪


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