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代表笹森コラム 2022年11月『ハッピーメッセージ』

更新日:2022年12月23日

 アノネ音楽教室では週に1回スタッフの全体会議を行うのですが、そこで”ハッピーメッセージ”という時間を設けています。その1週間で感謝したいと思ったことや幸せに感じたことを手紙に書いて、互いに共有するというものです。きっかけはいたってシンプルで、なかなか感謝を人に伝える機会がないよなと、ふと思ったことが始まりです。


 日々働くなかで、ありがとうと思う瞬間がたくさんあるにもかかわらず、それを伝えきるきっかけがない。あらたまって、急に感謝を言い表すのもこっ恥ずかしい。だからこそ、あえて思いを言葉にする時間を取って、しっかり伝えきろうという取り組みです。これは本当にハッピーな時間で、今ではアノネ音楽教室の母体であった花まる学習会の、一部のブロック(地区)の会議にも逆輸入*されているほどです。


 さて、今回は最近私が経験したハッピーな出来事をいくつか紹介したいと思います。


 1つ目は、中学3年生でピアノのレッスンに通うAちゃんから、合宿のお礼の手紙をもらったことです。彼女は、かなり長く通ってくれている生徒です。手紙を読んでみると、合宿についての想いが書いてありました。チラシをもらったときからのワクワク感から始まり、本番の野外ステージでの開放感と気持ちよさ。未だに余韻にひたって写真を見返しているということ。結びは、この合宿が最高だったというものでした。


 その昔、

「本を読んで感動しても著者にお礼を伝える人はほとんどいない」

と、ある作家さんが語っていたことを思い出しました。心のなかに想いがあっても、それを直接伝えることは案外あまりしないよな、と。何より、手間ということもありますよね。


 対して今回は、中学3年生という思春期真っただ中の女の子が、わざわざ便箋3枚にもわたる熱い想いを書いてくれたわけです。また、手紙の一節には

「自分にはもったいないぐらいの人数の弦楽器の子たちが合わせてくれた」

といった、謙虚さがにじみ出る言葉もあり、大変感心しました。中学生という大人に対して壁を作りがちな時期に思いを込めて送ってくれたその手紙に、ずいぶんと温かい気持ちになりました。


 ハッピーな出来事の2つ目は、小学2年生のBくんのチェロのレッスンで起こりました。寝っ転がったり、私と戦おうとしたりと、昔の私とそっくりなこともあって最高にかわいいBくん。そんな彼と、初めて30分のレッスンをしっかりできたのでした。離席なしで終始前向きだったことに加え、振り返りを何度もしっかりできる濃密な時間でした。


 私は、いわゆる”ちゃんとしたレッスン”を目指しているわけではありません。あくまでも楽しく、前向きに、なおかつ少しでも長く楽器を学べたらいい。そんなスタンスで、”ちゃんとすること”を強いたわけでもないのですが、彼はずっと集中力をきらさず、レッスンをやってのけたのです。


 会話のなかでも成長が見られました。

ついこの間までは、少しでもうまくいかないことがあると

「もうわかんない!」

と癇癪を起こしがちだったBくん。そんな彼が、臨時記号(曲の途中で出てくる♯や♭。ピアノでいえば、臨時で黒い鍵盤と白い鍵盤とを使い分ける際などに使われます)がたくさん出てくる場所で

「いろんなマークがあって、頭がごちゃごちゃになっちゃってるよ〜!」

と、自らのざわつきそうな心をちゃんとキャッチしているのです。第三者目線で、俯瞰したように伝えてくれたことが、あまりにかわいらしくナイスで、笑ってしまいました。その言葉に込められた、今までの楽しい時間を決して壊さないようにという彼の本能的な気配りに、成長を感じました。