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代表笹森コラム 2023年11月『先生との信頼』

『先生との信頼』


 先日、我が子が保育園デビューをしました。登園初日は、「しっかり見てくれるかな」「ちゃんとかわいがってくれるかな」といった、期待と不安が入り混じる気持ちでした。息子と迎えに行った妻が無事帰宅したかとほっとしたとき、事件は起こりました。


 1つ目は、楽しみにしていた日誌。登園初日がどんな様子だったのか早速開いてみると、我が子の名前が間違えられていました。私自身も同じ教育の現場に立つ身として、名前の間違いには細心の注意を払います。ましてや、呼び間違えならまだしも、書き間違えです。ちゃんと我が子の名前を覚えていないのではないかと、若干のストレスを感じました。


 2つ目は柔軟剤の匂いです。私が匂いに敏感というのもありますが、保育士だった妹でも強すぎると言うほどでした。赤ちゃんのものであれば、洗剤や衣類などは低刺激のものを選んだりと、そこに気を張るのは当たり前でしょう。我が家ではまだ洗剤を使わず、お風呂もお湯で流すだけなので、それだけだと匂いが残ったのでした。


 さらにこれだけで終わらず3つ目です。おしっこは大丈夫かなとおむつを確認したところ、そこにあったのは漏れたうんちでした。背中一面にうんちが漏れていて、しかもそれが乾燥してしまっていたのです。帰りに漏れたのであれば濡れているはずですが、背中も服もカピカピに乾燥しているところからみて、明らかに数時間経っている状態です。乾燥したうんちはなかなか取れず、「肌が荒れたらどうしよう」「臭かったんじゃないか」「先生は長時間近くにいなかったのか」など、不安といら立ちを覚えました。私は

「かわいそうに、この汚れはどうなってんだ」

などとぶつぶつと言いながらおむつを変えました。そして妻に

「明日の朝保育園に送り出すとき、先生に名前の間違いのこととか、うんちのこととかを伝えてもらえない?」

と聞きました。すると妻からは

「ん〜」

と気の進まない返事がきました。妻は普段から人に対して指摘することを好まない性格です。だから言いたくないのかなと思い、もう少し突っ込んで伝えてみました。

「いやいや、名前の間違いも、うんちのことも、保育士さんとしてどうなのかな。伝えてあげた方がいいんじゃない。また繰り返されるかもしれないよ」

と。

すると次のように返ってきました。

「信頼関係ができてから言う」

と。さらに、

「弾(だん)*は、先生に安心してのびのび見てもらいたいから、先生と信頼関係が築けたときに話す!まだ信頼関係が築けていないのに指摘すると、先生が構えちゃったり、私たちの顔色をうかがうようになったら、弾にとっても良くないでしょ?もっとミスが増えるのは嫌だよね。まずは先生と信頼関係が結べるように、朝見送りに行ったときに、ちゃんと先生とたくさん話して仲良くなるからそれからだよ。『この子の親からはクレームが来る』って思われたり、親の顔がチラついて、配慮された気持ちで弾に接してもらっていいことないでしょう」

と続きました。

*息子の名前です。


 私はその話を聞いて、確かにそうだと膝を打ちました。目先の不安を解決したい。でもそれが時として大局を見失ってしまう。散々指導現場を見てきてわかってはいましたが、「我が子のことになると近視眼的になること」をようやく実体験として経験しました。


 今回の場合であれば、通わせて早々に意見を言うことより、保育士の先生から「あの親御さんなら何があっても大丈夫!」と信じてもらえて、初めて我が子に挑戦の機会が与えられる。そして、心に踏み込んでもらえて、ぶつかってもらえる。また、息子のことを考えれば、わが子に関してネガティブなことがあったら、素直に伝えてほしい。そのためには、まずは私たちに対して安心感を抱いてもらうことがなにより最優先であるということは明らかでした。


 というのも、この話を振り返っていたときに、私自身が日々保護者の皆さまの想いに支えられていることを思い出したからです。「先生だから」「先生ならきっと」と、いつも期待と信頼を言葉にしてくださる保護者の方々の言葉があるからこそ、自分がよりのびのびと子どもたちに接することができていると改めて気づかされました。子どもを叱るとき、挑戦させるとき、背中を押すとき、その子がつらい思いをしたり傷ついたりするかもしれない。しかし、いつも「完璧でなくても先生なら何があっても大丈夫です」といった言葉をいただいてきたことで、私自身も挑戦したり、全力で子どもたちにぶつかったりしてこられたのでした。私自身が保護者の皆さまに安心できる場をつくっていただいたうえで指導にあたれているということを改めて見出すことができました。


 汚れて嫌だった。名前を間違われて嫌だった。こういったことは、息子が抱いた思いではなく、あくまでも私たち親の解釈です。まだ右も左もわからない息子を見てみれば、毎朝通園時はニコニコご機嫌ですし、何も変化はありません。それどころか、保育園ではたくさん笑ってお兄さんお姉さんにかわいがってもらっているそうです。


 さて、次の日に妻に

「何か伝えてみた?」

と聞いたところ、

「先生、おむつ少しキツめにしてもらっても大丈夫です!」

と会話の流れでスッと言ってみたとのことでした。私が息子を送り出す朝は、恥ずかしさもあり仏頂面で挨拶をして必要最低限の情報を伝えて帰ってきます。妻が送り出しを担当する日は、そんな私に

「たくさん話して仲良くならなきゃ!」

と言って家を飛び出していくのでした。


アノネ音楽教室代表 笹森壮大

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