代表笹森コラム 2023年3月『2022年度もありがとうございました!』
2022年が幕を下ろし、新たな年度に入ります。この度は、ご進学・ご進級おめでとうございます。
先日マスク着用が個人の判断とされたことを経て、ようやくコロナ禍と言われた状況も一段落という空気になっているでしょうか。多くの人が暗い気持ちになりがちだった数年を乗り越え、やっとコロナ禍以前の通常運転が再開できるのかなと、わくわくしております。
アノネ音楽教室として振り返ったとき、この3年間よく耐え抜いたなというのが正直な感想です。2020年1月に花まる学習会から独立して、さあこれから!と意気込んだ矢先に、パンデミックという大きな壁が立ちはだかったのでした。毎年開催していた3月の体験レッスンもなくなり、新規での入会が途絶えました。広がっていくことを前提にした出発だったため、いきなり守りに入ることにはなかなか辛いものがありました。
クラシック音楽業界は、オーケストラなどそもそも多くが文化事業として補助金でやりくりすることが前提であったりします。また、音楽家という職業自体、フリーランスが圧倒的に多いものです。ビジネスモデルとして成立しにくい職業であることは間違いありません。
一方で、教育という観点から見たとき、子どもたちの成長に音楽を通じて大いに貢献できることは自明です。むしろ世界的に、芸術を通して感性を育むことの重要性がますます高まっています。 そのような可能性を大いに感じつつ、アノネ音楽教室の前身の”音の森”を設立しました。テーマとしていたのは、音楽家がきちんと社会に必要とされ、自立できるようにするということ。そして、それは今でも変わっていません。しかし、現実は残酷で、パンデミックに直面したのでした。
私は花まる学習会で正社員を経験しているので、会社に属することでどれほど手厚い待遇を受けられるか、身を持って知っています。他方、個人で活動している音楽家や講師たちは、感染拡大に際して本当に孤軍奮闘していました。音楽のレッスンでいえば、オンラインでお稽古を進めるハードルの高さもありました。音楽大学などの専門校では、せっかく入った学校で始めの数か月間レッスンがなかったり、アンサンブルやオーケストラの授業までもがなくなってしまいました。
音楽教室も同様で、結局オンラインレッスンを最後まで実施しなかった教室の話も耳にしますし、閉校してしまった音楽教室もあります。
「オンラインでクラシック音楽は教えられない」
「オンラインで教えるためのインフラにコストがかかりすぎる」
など、”できない理由”から、生徒の学びが止まってしまう状況を数多く見てきました。学生や保護者の方の悲痛な声には、胸が苦しくなったものです。
アノネ音楽教室はというと、恵まれた状況にありました。母体である花まるグループがいち早く感染対策のチームを設立して、授業そのものもオンラインに移行したことから、足並みを揃えてオンラインレッスンを始めることができました。こうして、学習塾としても、音楽教室としても、業界最速でオンラインへの移行ができたのでした。その準備を第1回目の緊急事態宣言発令の1か月ほど前に着手できたことが生命線でした。
それでも、前述のように新規入会が見込めなかったことから、毎年伸び続けていた人数の推移が鈍化したことを記憶しています。一般的に、会社は設立から3年で65%、10年で6.3%、20年で0.39%ぐらいしか生存しないと言われています。ほとんどが潰れると言っても過言ではない世界です。そんななか、今日まで当教室が継続できたのは、新規入会はあまりなかったにしても、その時期より前から引き続き、信じて我が子を送り出してくださった保護者の皆さまの支えありきです。通わせていただけなければ、あの頃早々に潰れていたでしょう。
私たちにできたことは、制約のあるなか、最大限の情熱とアイデアをもって子どもたちに学びの機会を届けることでした。いかにその年代でしかできない経験を絶やさず提供していけるかということを中心に据えて、この3年間を過ごしてきました。そして、当教室の運営チームや講師陣という、そこに全力で取り組む仲間に恵まれたことも幸運でした。
この春は、日本でもようやくマスク着用の考え方が見直されたりと、各所