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リレーコラム:2024年6月 『分かる楽しさ』荷田 直美(はすだ なおみ)

執筆者紹介:荷田 直美(はすだ なおみ)

 子どもたちからの愛称は”なおみ先生”。専門分野である声楽の個人実技レッスン講師のほか、オンライン校 水曜日 集団音楽教室小学生ベーシックコースの教室長を担当。また、対面の集団音楽教室で子どもたちの歌声をサポートすることも!ソロでの歌唱はもちろん、合唱の経験も豊富。「なおみ先生の声を聞けば、どこにいるかすぐに分かるよ!」といわれるほど、いつも明るい声で親しまれています。


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『分かる楽しさ』


 私は幼少の頃から音楽教室に通い、ピアノやエレクトーン、クラリネット、チェロ、そして今も続いている声楽と、さまざまなレッスンを受けてきました。それと並行してソルフェージュのクラスも受講していました。ソルフェージュというのは、聴音(音の聴き取り)や新曲視唱(初見で楽譜を読んで歌う)を通して、音楽の基礎力を身につけるためのレッスンです。アノネ音楽教室の集団音楽教室各コースも、ソルフェージュを中心的に扱っています。私自身が子どもの頃は、一般的なソルフェージュでよくあるように、最初にレベル分けテストを受けて、その結果に応じて決められたクラスに、週1回程度通っていました。私は聴音とリズムが得意だったので、それらの課題は楽しく解くことができました。一方で新曲視唱には苦手意識がありましたが、負けず嫌いな性格からなんとか食らいつき、根気強く習っていました。


 さて、舞台はアノネ音楽教室に移ります。家では「アノネは楽しいから休まず来たい!」と話しているという、笑顔のすてきなAちゃん。ある日のこと、少し疲れた様子もありつつ、ハキハキと気持ちの良いあいさつで教室に入ってきました。


 この日は、彼女にとって初挑戦となる『Primo』*というソルフェージュアプリに取り組んでみることになりました。初回は「レベル分け問題」というものが出題され、そこでは簡単なものからかなり難易度の高いものまでが登場します。読譜やリズム打ちの途中でレベル判定のための難しい問題に触れたAちゃんは、「つまんない!」「分かんないからやりたくないもん!」と大粒の涙を溜め、必死に訴えてきました。

*『Primo』…小学1年生以上の全コースで対象のアプリ教材。アノネ音楽教室の教材開発チーム(国際音楽教育研究所)が問題を制作


 レッスン開始前に、私からは「Aちゃんがどのくらいのレベルなのか知るためのテストから始まるから、今日はレベルが高い問題も出てくるよ」と伝えていました。しかし、常に完璧を目指す彼女にとっては、画面上に花まる以外のマークが現れることがたまらなく許せなかったようです。


 その様子を見て、私はかつての自分の姿を思い浮かべました。

 私がソルフェージュのレッスンに通っていた頃は、『Primo』のような便利なツールがなかったこともあり、壁にぶつかるたびに教本を読んで教わった内容を思い出し、次のレッスンで先生に見てもらうしかありませんでした。毎週教室まで出かけ、1時間のレッスンの間にポイントを把握しきれず、課題を翌週に持ち越すこともしばしばありました。分からないことが嫌で、悔し涙を流すときもありました。


 一方、Aちゃんであれば、毎日おうちにいながらソルフェージュに取り組めるだけでなく、アプリが自動的に正誤判定までしてくれます。私はAちゃんに、「先生が子どもの頃にはこんなにすごいアプリはなかったんだよ。Aちゃんは毎日先生といるみたいだね!『Primo』を毎日やったらすらすら楽譜が読めるようになって、新しい曲にもたくさん挑戦できるようになるよ!」と話しました。


 Aちゃんは耳がとてもよく、『ピアノさんぽ』という聴音(音の聴き取り)の問題ではかなりの集中力を発揮して、最後まで弱音を吐かずにやりきりました。そして初めてにもかかわらず、銀メダルを獲得!得意な問題は楽しかったようでした。


 もちろん、なかには初めからうまくいくこともあります。しかし、ほとんどの場合、大人も子どもも、誰だって分からないところからスタートするものです。


 たとえば大勢で会話しているときに、少しの間中座してから戻ると、話の内容が進んでしまっている。そのまま話についていけない状況が続くと、次第に「つまらない」という感情が湧きおこってくるのではないでしょうか。「ついていけない」は「わからない」、そして「つまらない」に、簡単に移り変わるものだと私は考えています。


 Aちゃんは最近『Primo』でリズムの分野を扱う『ボンゴ』にて、先に鳴ったガイドの音をしっかりと真似してリズムを打つことができるようになってきました。「学ぶ(まなぶ)」という言葉は、響きが近い「真似る(まねる)」が語源ともいわれています。子どもは周りの大人の振る舞いを模倣することで学んでいくものですし、分からないことを解決するにも、真似することが一番の近道です。レッスンや授業と限らず、何事においても同じだといえるでしょう。


 Aちゃんは「次の『おぺら』*を早く読むんだ!」と自ら目標設定して、苦手な問題にもコツコツと挑戦しています。そして教室に来ると『Primo』の『おぺら』の画面を「どうだ!」と言わんばかりの表情で見せてくれます。

*『おぺら』…主にアノネ音楽教室で使用されている作曲家の伝記教材。紙面のテキストがあるほか、アプリ教材『Primo』内でも、ポイント(スタンプ)が貯まるとアプリ内でお話を読んだり、作品の演奏を聴くことができるようになる


 以前は「この音はドレミでいうと何の音かな?」という問いかけがあると、「ド・レ・ミ…」と数えながら読んだり、「わかんない!」と声を上げたりしていた彼女が、今では誰かに聞かれなくても、自ら音名をすらすら読んで答えられるまでに成長しました。それどころか「こんなの簡単だよ!もっと長い曲をやりたい!」と自らせがむほどに、譜面を読んで音やリズムを捉えることに前向きになってきています。『Primo』に日々取り組むことで、問題のレベルアップにあわせて、彼女自身のソルフェージュ能力も格段に上がっているようです。私たちも、『Primo』を使う場面に限らず、そういったスモールステップを見逃さず、子どもたちのがんばりに応えていけるよう努める日々です。


 アノネ音楽教室に通う子どもたちが、”わかる楽しさ”、“自由に音楽を表現できる楽しさ”をたくさん体感しながら、ステップアップしていけるように。保護者の皆さまとともに、私たち教室長・講師一同も、愛情を込めてお子さまをサポートしてまいります。



アノネ音楽教室 荷田 直美(はすだ なおみ)- ”なおみ先生”


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コラムに対するご感想などがございましたら、

info@anone-music.comまで、ぜひお寄せください♪


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